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夜の牛舎、AIに見張らせたら6万円だった

2026.09.14 調べた事例他所の実例(うちは未導入)

島根の酪農家さんが、市販のカメラ3台と生成AIで夜の牛舎を見張り始めたそうです。初期費用は約6万円、月々の固定費はゼロ。中身を掘ったうえで、中標津でやるならどこを変えるかを書きます。引っかかったのは、値段じゃなかったです。

市販の監視カメラ生成AILINE

この記録のサマリ

困っていたこと
分娩と起立不能を見に、夜中に何度も牛舎へ行っている
つくったもの
島根の牧場が自作した、カメラ3台と生成AIの見守り。通知が来たときだけ人が見に行く
使った道具
市販の監視カメラ / 生成AI / LINE
ハマったところ
30分に1回しか見ていないので、その間は空白になる。常時見ようとすると、そこから費用が跳ねる
流用できるところ
検知の作り方は公開されている。変えるのは2つ。届け先をLINEにすること、そして結果から遡って自分の牧場の症例を貯める仕組みを一緒に作ること
牛舎で首を出すホルスタイン
写真はイメージです(Pexels / Cristian Rojas)。川上牧場でも中標津の牛舎でもありません。

こんにちは。
中標津でコワーキングスペースmilkをやってる久保です。
AIで現場の困りごとをなんとかする、みたいな仕事をしています。

酪農の専門家ではないです。
ただ、この辺に住んでると「夜中に何回も牛舎見に行ってる」って話は、普通に耳に入ってきます。

で、先日ちょっと手が止まった投稿がありまして。

牛舎にAI、って聞くと、だいたい何百万円の設備の話じゃないですか。
でもこれ、カメラ3台で6万円らしいんですよ。

え、桁ふたつ違うくない?と思って、、、
調べたら、この方はポッドキャストでも喋ってるし、取材の連載も出てて、中身がほぼ全部公開されてました。
島根県出雲市の川上牧場さんです。

夜中に牛舎行って、何を見てるのか

夜に行く理由は、だいたい2つです。

ひとつは分娩。生まれてないかな、を何度も確認しに行く。
もうひとつが起立不能。牛が自力で立てなくなって横になったままだと、お腹にガスがたまって呼吸ができなくなる。早期発見が命を左右します。

家族経営で毎晩何度も回るのは、体力的にきつい。
だから川上さんはこう考えた。

AIが異常を見つけたときだけ通知してくれたらどうだろう。

わかる。めちゃくちゃわかる。

仕組みは、思ったより素朴でした

01
カメラ3台

市販品を牛舎の高いところに。1台およそ15,000円

02
30分に1回

手元のパソコンが、画像を1枚だけ撮って送る。動きを感知して撮るのではない

03
生成AIが見る

発情の疑いがある乗駕行動と、起立不能。この2つだけを判定する

04
要注意だけ通知

問題なしのときは何も送らない。6時間に1回、稼働中の合図だけ別に届く

05
人が見に行く

通知を見て、必要なら牛舎へ。最後の判断は人がする

川上牧場の見守りの流れ。動きを感知して撮るんじゃなくて、時計で30分ごとに1枚だけ撮って送ってます。

AIに渡してる役割が、いちばん面白かったです。

あなたはベテランの獣医師・家畜人工授精師です。

これを書いて、画像を判定させてる。
見せてるのは、発情の疑いがある乗駕行動と、起立不能の不自然な転び方だけ。
寝てる、餌食べてる、みたいな普通の様子は判定させてません。

見るものを2つに絞ったこと。 ここがこの仕組みの肝だと思います。

判定するたびに日時と画像と結果が表にたまって、あとから人が丸とバツを書き足す設計にもなってます。

AIを導入するというより、AIを一緒に育てているという感覚です。

この言い方、好きです。

お金の話。月額0円ってどういうこと?

カメラ本体約15,000円 × 3台
ケーブル・金具・Wi-Fi中継機初期費用に込み
取り付け0円(自分で設置)
初期費用の合計約60,000円
毎月の固定費0円(通信費と電気代を除く)

この6万円は機器代だけです。
川上さんは自分で設計して自分で付けてるので、手間の分は入ってません。

月額0円の答えは、30分に1回しか画像を送ってないからでした。
1台で1日48枚、3台で144枚。この量なら生成AIの無料枠におさまる。

でも、、、これ裏返すとこうなります。

30分に1回ってことは、その間の30分は見てないってことです。 分娩や起立不能に対して、その空白で足りるのか。ここがこの仕組みの一番弱いとこだと思います。 ずっと見張らせれば空白は消えますけど、送る枚数が何十倍になって、そこから課金が始まる。 月額0円は、30分の空白と引き換えです。

できてないことも、ちゃんと書いてある

検知率も誤報率も、公表されてません。
「精度はまだ発展途上」という言葉だけで、誤認知もあると本人が認めてます。

似たことをやってる方がもう一人います。
鹿児島県長島町の和牛繁殖農家、福山健一さん。
市販の防犯カメラと画像認識で破水を検知する仕組みを、独学で4年かけて作った。
初めて成功したのが6月28日。そのあと、夜間の分娩と3日後の分娩では反応しなかった。
いまも改良中と新聞に出てました。

動いたり、動かなかったりする。これがリアルだと思います。
だから最後は人が見に行く設計になってるんですよね。

AIの前に、録画を残すだけで効いた牧場が道内にあります

枝幸町の株式会社J・Cさん。乳牛およそ200頭。
分娩の時期は30分おきに牛舎を見に行くこともあった、と書かれてます。

やったのは、クラウド型のカメラを入れて、まず映像で見えるようにしたこと。
AIの判定はまだ入ってません。

診療の回数3か月で 24回 → 5回
治療費約10万円減
台数・月額非公表

過去7日分の録画が残るので、「あの牛、いつから様子おかしかったっけ」をあとから見返せる。
それで診療が減った、という話です。
数字は導入元のNTT東日本の公表値で、台数と費用は出てません。そこは割り引いて読んでください。

「あとから見返せる」だけで、もう効く。
これが、次に書くことの根っこです。

で、中標津でやるならどうするか

通知はLINE。Discordは無理です

川上牧場では通知をDiscordに送ってます。
もともとゲーム仲間が喋るために作られた道具で、このへんの牧場で使ってる人、僕は見たことないです。

夜中に鳴る通知は、普段から見てる場所に来ないと意味がない。
LINEなら全員持ってるし、家族や従業員に回すのもグループ作るだけで終わる。
検知の作り方は川上さんが公開してくれてるので、変えるのは届け方のほうです。

冬は、カメラを替えればいい

氷点下と結露に家庭用のカメラは勝てません。
でも最初から寒冷地向けの屋外用にしとけば済む話です。

弟子屈町営牧場が、観光用に借りたカメラをひと冬試して、
氷点下20度、風速20メートルで故障なしだったので本格導入した記録が残ってます。

いま買えるやつを3つだけ。全部メーカー公表の数字で、値段は2026年9月時点の実売の目安です。

機種実売の目安自分の仕組みにつなげられるか寒さ
TP-Link VIGI C340I約2万円つなげられる(ONVIF・RTSP対応)。PoEで配線1本−30度まで
TP-Link Tapo C320WS約6,000〜8,000円つなげられる(RTSP対応)。ただし条件つき−20度まで
Google Nest Cam(川上さんが使った系統)約2.3万円そのままではつなげられない。Googleの開発者登録が要る−20度まで。電池式は氷点下で充電が進みにくい

最初から「つなげられる前提」の機種にしとくほうが、あとが楽です。
牛舎のアンモニアがカメラをどれくらい傷めるかは、ちゃんとした資料が見つけられませんでした。分からないので、分からないと書いておきます。

ここが一番引っかかった

もう一回あの一文です。

あなたはベテランの獣医師・家畜人工授精師です。

うまい手だと思います。思うんですけど、、、
これって、一般論としての獣医師に見てもらってるってことですよね。
教科書に載ってる乗駕行動は分かる。でも、その牛舎の、その牛のことは何も知らない。

どの牛が普段からよく乗るのか。
あの角度から見て、寝てるのと起き上がれないのがどう違って見えるのか。
そういうのは、そこで何年も見てきた人の頭の中にしかない。
検知率が公表されてないのも、たぶんここと関係してると思います。

僕なら、順番を逆にします

異常を見つけさせるより先に、この牧場では何がどう起きるのかを、機械に覚えさせるところからやります。

分娩も起立不能も、起きたら必ず分かりますよね。
だったら、起きたあとで遡ればいい。

僕が作りたいのは「異常を知らせてくれるサービス」じゃないです。
せっかく24時間録画してるなら、何かあった時に振り返って、解析して、その牧場の記録が貯まっていく仕組み。
判定の精度は、そのあとから付いてきます。 分娩した牛の対応が終わったあとに、その牛が分娩前にどんな動きをしてたかを遡って見る。特徴的な動きがあれば記録する。それを何回も繰り返して、共通する動きを確定させていく。順番はこっちです。
01
先に、事が起きる

分娩した。立てなくなった。治療した。起きたことは、牧場では必ず記録に残る

02
その日に遡る

起きた時刻から前にさかのぼって、その牛が映っているところを抜き出して保管する

03
症例と紐づける

この動きをしていた牛が、何時間後にこうなった。映像と結果をセットで残す

04
判断の材料になる

その牧場だけの見本が貯まる。一般論の獣医師ではなく、ここの牛を知っている目になる

異常を探させるんじゃなくて、起きたことから遡って見本を作る。答えが先にあるので、答え合わせがいらない。

ここがいいところで、答えが先に付いてるんですよ。
分娩したって事実は動かないので、その前の数時間の映像には「このあと生まれた」って札が自動的に付く。
誰かが座って何千枚も判定する作業がいらない。

半年も回せば、その牧場の分娩の何十例かが、映像つきで残ります。
カメラは誰でも買える。でもその牧場の症例は、その牧場でしか貯まらない。

先に言っときます。貯まった映像も記録も、その牧場のものです。
うちが預かって囲い込むことはしないし、やめるときは全部持って出てもらいます。

そのかわり、録画は常時にします

この作り方には条件がひとつ付きます。
遡るには、映像が残ってないといけない。 川上牧場の30分に1回方式だと遡れません。

なので、こう分けます。

高いのは録ることじゃなくて、見続けることなんですよね。
ここを分ければ、月々の費用は抑えたまま、症例だけが貯まっていきます。

揃えるのは、寒冷地向けのカメラ、配線と金具、画像を送る小さなパソコン、録画をためる場所。
何台でどこに向けるかは、牛舎ごとに全然違うので、見てみないと決まらないです。

カメラは買えるけど、症例は買えない

川上さんは家畜人工授精師で、島根県の牛群検定協議会の会長で、指導農業士です。
だからあの一文が書けるんですよね。 自分の頭の中にあるものを、言葉にして機械に渡せる。

でも、その資格を持ってる人がどの牧場にもいるわけじゃない。
持ってない牧場は、うちの牛で実際に何が起きたかを貯めるしかないと思ってます。

道具の値段は年々下がります。
でも、うちの牛舎で去年何が起きたかっていう記録だけは、去年から貯め始めた人にしかない。
早く始めるほど得なのは、道具じゃなくて記録のほうです。

最後に、ひとつだけ

道具を買う前に、今週、夜に牛舎行った回数を数えてみてください。
何時に、何のために行って、何もなくて戻ってきたのが何回だったか。紙の端でいいです。
それが分かれば、6万円が高いか安いかは自分で判断できます。

それと、牛舎にもうカメラ付いてる方。
録ってるのに誰も見返してない映像、けっこうあると思うんですよね。
それ、このやり方の材料そのものです。

こういうのを、9月30日から毎週水曜の夜に、僕の画面をそのまま見せながら動かします。

milkのカウンターで話す人たち

うちでもできる?と思ったら、水曜19時にmilkへ。

自分のAIの使い方を画面そのままで見せる部活です。
見るだけでOK。パソコンがあれば自分でも手を動かせますが、なくても大丈夫。部費1,000円、milk会員は無料。おもしろくなかったら返金します。

#01
質問するAIから、仕事を頼むAIへ。9/30(水)19:00〜20:30 部室:コワーキングスペースmilk(中標津)
部長 久保竜太郎
ともてっく部のページを見る →
毎週水曜 19:00〜20:30部室:milk(中標津)部費1,000円/milk会員無料おもしろくなかったら返金

(僕の理解で書いてるので、間違ってたりもっといいやり方あれば教えてください)

では、また。

出典

金額と仕様は、どれも各社・各人が公表してるものです。しるべが測った数字じゃありません。

やってみたい、と思ったら相談ください

よその実例を、道東の条件に置き換えて考えるのが僕の仕事です。「うちの場合はどうなる?」の一言から始まります。相談は無料、その場で叩き台を出すこともあります。