「IT×観光 講義ノート」をお届けします。岩谷学園ひがし北海道IT専門学校の久保です。
この連載では、東北海道の地域特性を踏まえつつ、IT×観光分野でのビジネスプランニング、マーケティング、フィールドリサーチに関する実践的な知見を、講義内容を通じてご紹介しています。
前回は、マーケティングの基本的な考え方と外部環境を把握するためのPEST分析、そして顧客・競合・自社を分析する3C分析について触れました。
今回はさらに踏み込んで自分たちの「強み」と「弱み」を客観視し、市場における「機会」と「脅威」を捉える「SWOT分析」、そして「誰に、何を、どのように伝えるか」というマーケティング戦略の骨子となる「STP分析」の入口について解説します。
まず、前回の重要なポイントを振り返ります。
これらの分析は、今回のSWOT分析をより深く行うための土台となります。
SWOT分析は、組織や事業の現状を客観的に把握するための代表的なフレームワークです。ITパスポートなどの資格試験でも出題されることがあるように、ビジネスの基礎知識の一つと言えるでしょう 。
SWOTは、以下の4つの頭文字を取ったものです。
重要なのは「強み」と「弱み」は自社の努力で変化させることが可能な内部要因であるのに対し、「機会」と「脅威」は自社だけではコントロールしにくい外部要因であるという点です 。外部要因はPEST分析や3C分析の結果がヒントになります 。
講義では、学生に動画制作の仕事における「機会」や「脅威」について尋ねてみました。ある学生は、地元の建設会社のInstagram運用契約が切れたという情報を得て、それが自身の動画制作スキルを活かす「機会」になるかもしれないと話してくれました 。
一方で「脅威」としては、家賃や光熱費、ローンなどの固定費の負担が大きいことを挙げていました 。事業そのものの外部環境というよりは、個人の財務状況に近い話でしたが、例えば電気代の高騰が事業運営コストを圧迫するというのは、事業にとっての「脅威」と言えるでしょう 。
SWOT分析を行う際は、感情や主観に左右されず、客観的な事実を書き出すことが重要です 。
例えば「高い技術力」 「ブランド力」 「優秀なスタッフ」 「良い立地」 「特許」 「顧客との強い関係性」などが「強み」として挙げられます 。逆に「資金不足」 「知名度が低い」 「古い設備」 「意思決定が遅い」 「人材不足」 「マーケティング力の弱さ」などは「弱み」となり得ます 。
外部環境では、「市場の成長」 「規制緩和」 「新しい技術の登場」 「顧客ニーズの変化」などが「機会」となる一方、「競合の出現」 「景気後退」 「原材料費の高騰」 「災害リスク」 「技術の陳腐化」 「法規制の変更」などが「脅威」として考えられます 。
講義では、実際に「中標津観光協会(または観光連盟)の担当者」という設定で、中標津の観光を盛り上げるミッションを背負っていると仮定し、SWOT分析を行うグループワークを実施しました 。
ある学生からは、以下のような意見が出ました 。
これらの意見は、中標津の観光が持つポテンシャルと課題を多角的に捉える上で非常に参考になります。
SWOT分析は、現状を整理するだけでなく、それを具体的な戦略に繋げることが重要です。そのために用いるのが「クロスSWOT分析」です 。これは、洗い出した4つの要素を掛け合わせて戦略の方向性を考える手法です 。
例えば、先の学生の意見で「体験型観光の人気上昇(機会)」と「手つかずの自然(強み)」を掛け合わせれば、「豊かな自然を活かしたユニークな体験プログラムを開発し、国内外の自然志向の旅行者に提供する」といった積極攻勢戦略が考えられます。
SWOT分析などで自分たちの状況が把握できたら、次はいよいよ具体的なマーケティング戦略の核心部分、「誰に」「何を」提供するかを明確にする「STP分析」に入ります 。
「みんなに良い」ものは、結果的に「誰にも響かない」可能性があります 。特定のニーズを持つ層に、深く刺さるメッセージや体験を提供することが重要です 。
広告予算やプロモーション活動を、本当に届けたい人に集中できます 。
Web広告、SNS、CRM(顧客関係管理)などを活用し、特定のセグメントにピンポイントでアプローチしやすくなります 。
パーソナライズされた体験が求められる現代において、STP分析は必須の考え方と言えるでしょう。ITの進化は、このパーソナライズをより高度に実現する上で大きな役割を果たします。
しかし、その仕組みを作るためにはまず人間が「どのような顧客セグメントが存在するのか」を深く理解する必要があります。
講義の最後には、STPの第一歩であるセグメンテーションの練習として、「『ひがし北海道』に来る観光客は、どんなタイプに分けられるか?」を考えるワークショップを行いました 。
例えば一口に「外国人観光客」と言っても、アジア系なのか欧米系なのかで興味や行動は異なります 。また、「自然を楽しみたい」というニーズも、ファミリー層なのか、アクティブな若者なのか、ゆっくり過ごしたいシニア層なのかで、提供すべき体験は変わってきます 。
学生たちには、東北海道に来そうな人を具体的にイメージし(例:野鳥の写真を撮りに来る人、養老牛温泉に毎年来るリピーターなど)、それらをグルーピングしてもらうという課題を出しました。
今回は現状分析のフレームワークであるSWOT分析と、マーケティング戦略の骨子となるSTP分析の入口について解説しました。これらの分析ツールは、知っているだけでなく、実際に使って自分の頭で考えることが大切です。
特にSTP分析は、ITを活用したパーソナライズ戦略の基礎となります。東北海道のような多様な魅力を持つ地域において、「誰に、どのような独自の価値を届けるか」を明確にすることは、選ばれる観光地となるための重要な鍵となります。
次回は、STP分析の「ターゲティング」と「ポジショニング」をさらに深掘りし、具体的な商品・価格・販路・販促を考える「4P分析(マーケティング・ミックス)」へと進んでいく予定です。















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